世界美術史辞典

隋・唐時代は、中国の歴史における重要な時代であり、隋の建国から唐の滅亡までの期間を指します。この時代は、統一された中国帝国が栄え、政治・経済・文化の発展が著しい時期でした。
隋王朝は、隋文帝（楊堅）によって581年に建国されました。隋文帝は北朝の分裂を終わらせ、中国を再統一しようとしました。彼は強力な中央集権的な政治を推進し、土地制度の改革や法典の整備などを行いました。また、大運河（京杭大運河）の建設などの大規模な公共事業も行われました。しかし、政治的な強圧や経済的負担による民衆の不満などから、隋は短命に終わり、618年に滅亡しました。
隋の滅亡後、唐王朝が成立し、中国は再び統一されました。唐は、政治的な安定と繁栄が特徴であり、中国の黄金時代とも称されます。唐の初代皇帝である唐高祖（李淵）とその後継者たちは、経済政策や行政制度の改革を行い、文化・芸術の発展を促しました。
唐時代は、中央集権的な政治体制の下で国力が強化され、社会の安定と発展が進みました。唐はまた、外交や貿易の活発化によって、シルクロードの交易路を通じて東西文化の交流が盛んに行われました。この時期には、詩や絵画、建築などの文化芸術が栄え、多くの優れた文人や詩人が登場しました。
しかし、唐の後半になると、政治的な腐敗や内乱が発生し、安史の乱（755年-763年）などの戦乱が起こりました。この混乱期には、政治的な権力が分裂し、中国は再び分裂状態に陥ります。907年に唐は滅亡し、五代十国時代へと移行していきます。
隋・唐時代は、中国の歴史上で政治的な統一や文化の発展が見られた重要な時期です。特に唐時代は、中国の文化
や芸術が最も栄えた時代として知られており、その影響は後の時代にも続きました。

中国の隋・唐時代の美術は、中国史上で非常に重要な時期であり、芸術的な繁栄と革新の時代とされています。
隋朝（581年-618年）：
隋朝は中国を統一した王朝であり、短い期間ながらも文化的な発展がありました。隋朝の美術は、前代の南北朝時代の要素を受け継ぎながらも、独自の特徴を持っています。特に隋代の壁画や彫刻は、優れた技術と審美観を示しています。隋朝の宮殿や寺院は、壮麗な建築と美しい装飾で知られています。
唐朝（618年-907年）：
唐朝は中国史上最も栄華を極めた時代のひとつであり、芸術と文化が繁栄しました。唐代の美術は、多様なスタイルとテーマの探求が特徴です。壁画、彫刻、陶磁器、詩、書法など、さまざまな芸術分野で傑出した作品が生まれました。
唐代の壁画は特に有名で、長安（現在の西安）の敦煌や洛陽の龍門石窟などで見られます。これらの壁画は、仏教の教えや宮廷の風景、歴史的な場面などを描いており、豊かな色彩と繊細な筆触で表現されています。
た、唐代の彫刻も高度な技術と芸術性を持っています。仏像や動物の彫刻など、様々なテーマが彫り込まれました。また、唐代の陶磁器も精巧な装飾と優れた技術で知られており、国内外に広く輸出されました。
詩や書法も唐代の文化の重要な一環であり、多くの文人や学者が優れた作品を残しました。唐詩は中国文学史上最も傑出した時期とされ、その影響力は後世にも及びました。
隋・唐時代の美術は、中国の芸術史において黄金時代とされ、後の時代の芸術にも大きな影響を与えました。その美術は優れた技術と豊かな表現力を持ち、中国文化の栄光の時代を象徴しています。