世界美術史辞典

殷（イン）時代は、中国の先史時代から青銅器時代にかけて存在した王朝です。殷時代は、紀元前約1600年から紀元前1046年までの間に栄えました。
殷時代は、中国の黄河流域で栄えた古代の文明であり、その中心地は現在の河南省の一帯に位置していました。殷は、中国の最初の王朝とされることもあります。
時代は、青銅器の製作技術や使用が盛んであり、特に青銅器を用いた儀式や祭祀が重要な役割を果たしていました。青銅器の製作は高度な技術を要し、殷の社会や文化の発展と密接に関連していました。
また、殷時代は、文字の使用が発展した時代でもあります。殷の文字は甲骨文字と呼ばれ、主に亀甲や獣骨に刻まれた文字で残されています。これらの甲骨文字は主に卜辞（ぼくじ）と呼ばれる占いのための記録や祭祀の文書とされており、後の漢字の起源となったとされています。
殷時代は、神聖な王権制を持つ王朝であり、最も有名な王としては商（しょう）王朝の最後の王である紂（ちゅう）王が知られています。彼の統治は暴虐なものとされ、周（しゅう）王朝の武王によって倒され、殷王朝は滅亡しました。この事件は中国史上の重要な出来事であり、「殷滅ぼし、周興す」という言葉で表現されるように、周王朝の成立と中国の政治的な転換点となりました。
殷時代の遺跡や甲骨文字の発見により、中国の古代史や文化の研究に大きな貢献をしています。また、殷時代の遺産は、中国の現代の文化や芸術にも多大な影響を与えています。