世界美術史辞典

オーギュスト・ロダン（Auguste Rodin）は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの彫刻家です。彼はモダン彫刻の巨匠として広く認知され、その作品は感情的な表現と豊かな形態によって特徴付けられています。
ロダンは、自然主義的なアプローチを取りながらも、内面の感情や情熱を象徴的に表現することに注力しました。彼の作品は、人体の動きや状態の捉え方に独自の感性を持ち、個々の作品が持つ感情や内的な状態を視覚的に表現しました。彼はまた、彫刻の表面や質感にも注意を払い、彫刻の体積感や質感を豊かに表現するために粗い彫刻線やテクスチャを用いました。
ロダンの代表作品には、「考える人」（The Thinker）や「地獄の門」(The Gates of Hell)や「カレーの市民」（The Burghers of Calais）や「キッシングカップル」（The Kiss）などがあります。これらの作品は、人間の情熱や葛藤、内面の世界を捉えたものであり、精神的な深さと力強さを持っています。彼の作品は当初は非伝統的で革新的であったため、当時の芸術界で一部の批評家からは反対や批判を受けることもありましたが、後に広く称賛されるようになりました。
ロダンはまた、彫刻の制作において実験的な方法を採用し、模写や鋳造技法の改良を行いました。彼のスタジオは多くの弟子を引き寄せ、後の彫刻家たちに大きな影響を与えました。
オーギュスト・ロダンの作品は、感情や情熱、存在の複雑さを豊かに表現するための彫刻の新たな可能性を示し、彫刻の表現力と芸術性を高めました。彼の功績はモダン彫刻の発展に大きく寄与し、彼自身は20世紀の彫刻芸術における重要な先駆者となりました。